ロジャース・ブルベイカーについての覚え書き (1)

Nationalism Reframed: Nationhood and the National Question in the New Europe

Nationalism Reframed: Nationhood and the National Question in the New Europe

ロジャース・ブルベイカー Rogers Brubaker は、アメリカの社会学者。ピエール・ブルデュー Pierre Bourdieu 流の社会分析を行う。現在カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。ブルデュー関連では、同じカリフォルニア大学のバークレー校に、アメリカにおけるブルデューの主な翻訳者であるロイック・ヴァカン Loïc Wacquant が在籍している。カリフォルニア大学はブルデューの影響が強いのだろうか。

なかなかの変わり者だと思う。ハーバードを summa cum laude で卒業したあと、イギリス・サセックス大学の Social and Political Thought の大学院へ進学している。こんなキャリア滅多にいないだろう。その後、コロンビアで社会学の博士号を取得。この間に10年のブランクがある。この間に何をしていたのか、非常に気になるのだが…まあ、それはまた今度。

ブルベイカーの主著、Nationalism Reframed について少し書いてみたい。この本はとてもよい本なのだが、残念ながら翻訳が未だに無い。訳しにくいのだろう。それはよく分かるのだが、それにしたってこの名著を訳さないというのは問題があるのではないだろうか。事実中国語には翻訳されているわけだし。

いちおう ナショナリズム論の名著50 に紹介があるのだが、これははっきり言って良くない。まず、タイトルの意味を誤解している。筆者はこの題が「ナショナリズムが東欧で再構成された」という話だと理解しているようだが、そうではない。Nationalism Reframed というのは、我々自身がナショナリズムを捉えるフレームをもう一度作り直しましょう、というもので、従来のナショナリズムの理論に対する反駁なのだ。それを理解しなければならない。

(一応続く予定)