覚書

A. 宛名のない手紙を書き続けるということが重要である:宛名は手紙にとっては単なる障礙物にすぎない。

B. 観照的生の本質は過去へ投げかける視線にある:未来へと投げ出されてあることを生きるということが活動的生の根幹にある。

C. 社会的なものは性的なものである:エロスは水平的でありアガペーは垂直的である。

垂直的なものへと自らを差し出すことが存在の跳躍であるとフェーゲリンは論じ、それこそが西洋的思索の根幹にあると考えた。しかし上位の存在へと引き裂かれてあることは一方で存在の原初的な共同性を剥奪する。吾々はその原初的共同性の喪失を単に悼みそこへの回帰を願うのではなく、それを肯定的に乗り越えて引き裂かれてあるものの連帯を作り出さねばならない。