倫敦記

もうすぐ十月も終わってしまう。この一ヶ月で随分と人類学の古典には親しんだ。すぐに日記を書くのをサボってしまうのはよくない癖だ。

いま私を悩ませているのは博士課程のリサーチ・プロポーザルである。修士論文の構想もまだ完全には固まっていないうちから博士に進んで何を書くか決定せよなどと言うことは理不尽きわまりないが、12月までに書いてしまわねば何しろ奨学金が出ないという。金がなければ学びはできぬ。先日ガーナから倫敦を訪ねた先輩にきみは高等遊民なのだから好きなだけぶらぶらして好きな本を読み給えと言って頂き、随分と勇気づけられたものだが、かじる脛はもはや無し、銀行口座の預金残高が減っていくのをただ眺めるだけの毎日というのは心臓に悪い。日本の教育機関には属していないので政府からの奨学金はとんと望めない。やれやれだ。

PhD の構想も決まっていないし、少し時間を取って数年働くのも悪くない。博士課程に行くというのは決まっている。問題はいつか、ということだ。かといって今から就職活動をするのは愚の骨頂だ。ちょっとしたジレンマというわけである。まあ一年日本でぶらぶらするのも悪くないだろう。仕事も探せば見つかりそうだ。などと考えながら読書にふける毎日。