ふと見上げたロンドンの空は既に薄暗かったが、不思議なことに雲は見当たらなかった

今日はいい日だった。

昼飯のためにレンジでパスタを茹でていたら容器をレンジから出す際に力加減を間違え、指を思いっきり火傷し、パスタを流しの中にぶちまけ、ああ、と思いながら容器を脇に置いてパスタを救出していたら、脇に置いた先がまだ熱い電気コンロの上で、プラスチック製の容器は面白いように溶けてしまい、底に大きな穴が空くことになった。

ここのところ進路の問題、というか、来年どうするのかということで少し頭を悩ませていたが、新しい「レンジでパスタ」の容器を買うためにジャパンセンターへ向かう途中、ついでだから少し遠回りするかと思い立ってオックスフォードサーカスまでバスに乗り、ぶらぶらとロンドンの薄青い空を見ながらリージェントストリートを行き交う人々を横目で眺めていると、途端に自分の悩んでいたことが莫迦らしく思えてきた。俺は何をうじうじ悩んでいたのか。将来設計などするがらじゃあるまいに、無理にできないことをしようとして自分を追い詰めていただけではないか。たかだか1年後なにをしているかのイメージをうすぼんやりと持つために人生の終着点をいまのうちから決定しようなどとその発想がちゃんちゃらおかしい。縁があればどこかで働くだろうし、縁がなければ死ぬだけだ。それの何が悪い?

そう考えるとすとんと何かが落ち着いて、ぐっと気分が楽になった。何が起こるかわからないが、うまい飯を食い、コーヒーを飲んで、読みたい本を読もうじゃないか。これまでそうしてきて、これからもそうする、それだけの話だ。キャリアビルディングなど考えている場合ではない。俺は今を生きたいのだ。

キャリア?キャリア(笑)の間違いだろ?