BSR (Buddhist's Social Responsibility)

Seneviratne, H.L. 2001. Buddhist monks and ethnic politics. Anthropology Today 17(2): 15-21.

佛教は長らく平和的な宗教と見なされてきたが、スリランカにおいてはむしろ仏僧たちがタミル人に対する憎悪の担い手となっていたという。それは建国の父と崇められているアナーガリカ・ダルマパーラによるところが大きい。彼は(すでに見たように、西洋の佛教観に影響されて)スリランカの独立のために運動する一方で佛教を信奉し、仏僧の「社会奉仕」の重要性を説いた。その精神は、ワルポーラ・ラフーラの「ビクの遺産」に最もよく現れている。筆者は、この社会参画の精神がスリランカにおけるシンハラとタミルの抗争の火種になってきたことを認めつつも、一方で、この仏僧による「社会奉仕」が持ちうる倫理性を指摘する。1956年以降仏僧集団であるサンガは反タミル主義をつらぬいて来たが、自由党が勝利した1994年の選挙においては、より進歩的な仏僧たちがほかから内部から改革を図るという動きがみられた。政府が1994年に行った地方分権を進める政策に対して仏僧を含む一部の過激派が反発したことに対して大臣がそれを批判。これを受けて仏僧たちはこの大臣を強く非難し、罪を与える儀礼を大臣の出身区の菩提樹の前で行う。しかし世俗的なメディアの大勢がこれを強く批判し、仏僧内部の穏健派を批判に駆り出すことに成功したのである。筆者はこの事件から、世俗の側から進歩的な批判が仏僧に向けて行われ続ける限り、進歩的な仏僧のグループは拡大するだろうという楽観的な見通しを示している。

感想

  • スリランカの内戦は2009年に一応の終結を見た。この記事は2001年に書かれたものなので、今この著者がなんというかには興味がある。